CX60試乗記

マツダのCX60に試乗してきたので感想。価格帯とグレードごとの違いがかなり大きい車なので自分が現実的に買える&買いたいグレードの試乗車を探していました。

これまでの試乗記。

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マツダがFRに縦置きの直6エンジン主体のプラットフォーム、ラージプラットフォームを発表した時、世の中の車好きからは称賛の声、それと同じぐらい心配の声も聞かれてた。欧州勢がディーゼルゲートを誤魔化すためにEVのゴリ押しを開始し、さらに中国勢もEVでゲームチェンジを試み、ハイブリッドで電動化に先鞭をつけた多くの日本勢もその知見を生かしてEVに取り組む中で、マツダはなんと完全に逆張りのラージプラットフォームを出してきた。

実際のとこ僕は単なる逆張りではなく結構計算された一手だと思う。世界的なEVシフトは自動車メーカーだけでなくエネルギー産業や半導体産業も巻き込むし、充電やバッテリー再利用のためのインフラ整備が必要で国家全体も巻き込むプロジェクトになりうる。少なくとも自動車産業だけで内燃機関をゴミ箱に捨てられるレベルで普及させるのは難しいだろう。

EVシフトがコケればちゃんと内燃機関を守ったことで一人勝ちでき、最悪上手くいってもさほど規模の大きくないマツダならニッチな信者を囲い込めれば十分存続していける。ということであえて逆張りでこのプラットフォームを出してきたのはなかなか面白い一手だなと感心してるのだ。

で前置きが長くなりすぎたけどそんなラージプラットフォームの記念すべき第一弾こそCX60というわけ。出てきた時には主に乗り心地を酷評されてしまっていたようだけど、自分が感じた正直な感想を書きます。

まず外観デザイン。正直最初に写真でみた時には微妙だった。ここ最近のマツダ車の滑らかスタイリッシュ路線でなく正直もっさりしてて締まりのないデザインで、バンパーがボディ同色なのもそれを助長しているように感じたし、むしろ普通のSUVみたいに樹脂バンパーの方がメリハリが付いてビシッとしたのでは?と思った。

でも街でちょっとずつ走ってるのを見かけるようになり、そして今回実車をじっくり観察するとだいぶ印象が変わった。いやこれがちゃんと高そうな車に見える。

そりゃサイズがバカみたいにでかいからボリュームである程度の高級感は出せるけど、それだけじゃなくてちゃんとデザイン練られてると感じた。サイドの面の変化で見せる造形とか、フロントとリアのヨコ基調のデザインとか悪く言えばもっさりだけどよく言えばおおらかなデザインで、今までのマツダ車とはやや違う路線だけどこれはこれでアリかもと思った。

ただフロントバンパーにここまで余計な線は必要ないと思う。サイズはデカイんだからシンプルに縦は縦、横は横ってしたほうがボリュームで高級感は出せるはず。まあこの辺はマイナーチェンジで変えられる範囲だから改善を期待する。

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あとタイヤサイズがしょぼい廉価グレードだと一輪車に乗ったゾウみたいなバランスの悪さを感じるので個人的に廉価グレードはナシ。

次に内装。試乗したのはLパッケージで中間ぐらいのグレードなんだけど、そんなのでも当然の如く安っぽさは皆無。特に中間グレードでもグレージュ内装が選べるのが良い。しかも追加料金もなく単純に好みで選べる。

この艶消しの白い木目パネルがいいかんじ。テカテカの茶色い木目調パネルはみんなクラウンとかアルファードとかで見慣れてるから目が肥えてるけど、このタイプは見慣れないので本物かフェイクかの判別がつきにくい。実際には価格や環境問題を考えれば本物の木なんて使ってるわけが無いと思うけど。

エアコンの吹き出し口も凝りまくった造形で、一体幾つのパーツ使ってるんだと感心させられる。

後席はFRで大排気量エンジンのためのロングノーズを考えれば頑張ってるけど決して広くはない。このサイズでこの後席か…とは思う。質感自体は前席と遜色ないほど高い。

では試乗した感想。まず世間で酷評されてる乗り心地なんだけど、これは確かに舗装の悪い市街地をダラダラ走ってるとかなり揺すられる特に後ろから。しかも発進の時はアクセルをちょっと踏んでも反応せず、あれれ?と思って少し強めに踏むと下品にガバッと急発進してしまう。ガバガバ発進と低速での揺すられ感が組み合わさったせいでCX60=乗り心地悪いのイメージが定着しちゃったんだと思う。

一応擁護もしておくとある程度綺麗な舗装の幹線道路を時速5〜60キロぐらいで走っていると心地よいふんわり感とビシッとした安定感が両立されていて、本来はこれをもっと低い速度でも再現したかったんだろうなと思う。これからの熟成に期待したい。

あとディーゼルなんだけど、これがどっちかというと燃費重視のセッティングで、3.3Lもある割には物足りない。別にパワー不足ではなくておよそ2トンの重い車体に必要十分以上のパワーはもたらしてるし、試乗で走った割と厳しい坂道もグイグイ引っ張ってはいくんだけど、必要十分のさらにその上の圧倒的なパワーは残念ながら持ち合わせてない。その分燃費はかなり良くて、一回の走行距離が短い上不慣れな人が急発進と急停車を繰り返すであろう試乗車でリッター14キロ、普通に使えば20キロ近く走るはず。確かにサイズを考えれば驚異的な燃費だけど、この車に興味を持つ人はしゃかりきにリッター20キロ走ることばかりに価値を見出してはいないと思う。もう少しパワーに振って欲しかった。

それからFRでエンジン縦置きなおかげでタイヤ周りのスペースに余裕があるのでハンドルをかなり大きく切れる。自分で運転したことがあるのはFFかFFベースの4WDばかりだったので、最初はこんなにハンドル切れるんだと感動させられた。おかげでサイズからは想像できないほど小回りがきくし、ありとあらゆる安全装備が書ききれないほどてんこ盛りなのでボディサイズさえ許せれば意外と運転はしやすい車ではある。

ディーゼルの太いトルクとハンドルの切れやすさが組み合わさることで試乗した結構狭い曲がりくねった坂道でもかなりスムーズに登っていくことができた。流石に対向車には相当気を使うけど。

結論。形も内装も好みだし、車としても高速での良好な乗り心地とか素直な走りとか坂道でのパワーとか意外と良い取り回しとか潜在能力は高いんだけど、如何せん低速での突き上げとギクシャク感が良くない。どうせ高速道路とか年に数回しか乗らないし、100%の趣味車ならともかくファミリーカーとしても使われるSUVが低速で乗り心地が良くないのは致命的。でもそこが良くなれば真剣に次期愛車候補。とりあえずマイナーチェンジで顔が変わったりしたら乗り心地の改善に期待してもう一度乗りたい。

まあCX60が売れないとこのプラットフォームを使ったセダンとかクーペは出せないだろうから頑張って欲しい。 幸い街中だと結構高い車なのに時々見かけるようになってきてるし、乗り心地の改善とかフェイスリフトとか特別仕様車とかのテコ入れで長く売れる車にして欲しい。

テコ入れといえばガソリンエンジンが4気筒2.5Lだけだと寂しいので、3L6気筒とか2.5Lターボとかも設定できれば面白くなりそう。パワーユニットの魅力を増してほしい。

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